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2015.04.28 Tuesday

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    ​暖かいものを求めた日

    2014.01.23 Thursday

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      寒い日が続いている。駅からの帰り道、まさに冷凍寸前だった。
      この時僕は暖かいものを求めていた。暖かい何かを。非常に抽象的な言い方で申し訳ないのだが、具体的に何を欲しがっているのか思い浮かばない。暖かな、何かだ。

      その時、妻から携帯にメールが届いた。
      「今夜はお鍋にします」という内容だった。お鍋か……確かにこれも暖かい。でも、お鍋はどちらかと言うと「暖かい」より「温かい」に属するよな、なんて思った。
      しかしそれでも冷えた体にお鍋という言葉は結構効いた。たっぷりの野菜と鱈の切り身、それに豚肉を土鍋に入れ、ぐつぐつと炊きあげる。焼酎のお湯割りにレモンを絞る。
      あ、求めていたのはやっぱりこれかも。畳み掛けるように妻から再びメールが届く「熱々のお鍋ですよ。早く帰ってきて」なんだか堪らなくなってきた。僕は小走りで家に向かった。

      しかしその一方で、わざわざ二度もメールを送ってくる妻に多少の警戒心があった。家に戻ると彼女は早速こう言った。
      「ごめん、土鍋落として割っちゃった。今から買ってきて」やっぱりそうきたか。何かあるとは思っていたのだ。僕は再び家を出て、近所のホームセンターに向かう事となった。

      ホームセンターで土鍋はすぐに見つかった。カートに入れてレジに向かう。
      その途中、僕は視線を感じて足を止めた。嫌な予感がした。恐る恐る振り返った。するとそこには、つぶらな瞳で僕を見つめる子猫がいた。ペットコーナーだった。
      しまった……と思った。僕はこの店に来る時は意図的にペットコーナーを見ないようにしていた。しかし今日はどうした訳か足を止めてしまった。
      目が合った子猫は、偶然にも以前飼っていた猫と同じ種類の子だった。エキゾチック・ショートヘアという猫。僕はカートを引っ張り、ショーケースの前まで移動した。

      それからしばらくの時間、子猫を見ていた。ペットショップに意図的に立ち寄らない理由はこれだった。その場から離れられなくなってしまうのだ。
      よほど熱心に見えたのか、店員のお姉さんがやってきた。
      そして「抱っこしてみます?」なんて聞いてきた。僕は慌てて断った。しかしそれは無視された。ショーケースから子猫を連れて僕に手渡してくる。受け取らない訳にはいかなかった。
      ふわふわとした子猫は不安そうに小さな声で鳴いた。とても暖かかった。懐かしい暖かさだった。求めていたものが何であるのかを思い出した。それで十分だった。僕は壊れやすい美術品でも扱うようにお姉さんに子猫を返した。

      僕が飼っていた猫は十二歳の時に怪我が原因で死んでしまった。命あるものは必ず没すると何かの本で読んだ。あれからもう五年が経つ。
      死んでしまった直後はずいぶん引きずったものだが、最近は少しずつ思い出す事が減っている。それが良い事なのか、冷たい事なのか自分では判断できない。
      僕は猫が好きなのでまたいつか飼える日が来ればいいなあ、なんて思っている。ただ、それは決して今じゃなかった。
      溫暖的陽光下 難得溫柔 In a dream of you 梦中的你 夢の中のあなた

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